こんにちは。紅茶です。
今回ご紹介する本はこちら。
『ラブカは静かに弓を持つ』
どんな本?
基本情報
あらすじ紹介 & おすすめしたい方
「全日本音楽著作権連盟(通称・全著連)」に勤める若い男、橘。
橘は少年時代に起こったとある事件をきっかけに心を閉し、チェロからも遠ざかっていた。
ある日、上司より「ミカサ音楽教室に生徒として2年間潜入し、演奏権を侵害している証拠を掴む」という使命を与えられる。チェロを見ると動悸がするため気が進まなかったが、断りきれずに渋々スパイとして音楽教室に通うことに…。
これは、人との関わりが苦手な男が、スパイとして潜り込んだ音楽教室での関わりを通して少しずつ変わっていく、ハラハラドキドキの音楽×スパイ小説。
・音楽が好きな方
・前に進む勇気が欲しい方
・ハラハラするお話が好きな方
読みやすさ
読みやすさ的には普通です。著作権の話は少し難しいですが、詳しくない自分でも難なく読めたのでご安心ください。
何より続きが気になり、どんどん読み進めたくなります!
この本の魅力
綺麗な表紙
ハッとさせられる、とても綺麗な表紙なんです。
装画はよしおかさん、装丁は株式会社アルビレオさんです。
スパイ男の心境の変化
橘は少年期に巻き込まれたとある事件をきっかけに心を閉し、人との関係も極力避けて過ごしています。
その時の悪夢にうなされ眠れずに、病院で睡眠薬をもらう日々…
実はその事件はチェロ教室の帰り道で起こったため、チェロを見ると動悸がおこってしまうのです。
そんなチェロに約10年ぶりに触れ、橘はどう変わっていくのか…
また、教師や、同じ門下の生徒たちとの交流により、閉ざされた心が少しずつ開いていく…
橘が変わっていく様子に、人との繋がりの暖かさ、音楽の素晴らしさを感じ、勇気づけられました。
ハラハラドキドキ!
ただの生徒ではなく「スパイ」として潜入しているわけですから、バレる危険性もあります。
ヒヤッとさせられるような場面もあったり、大切な人たちを欺いているという事実が重くのしかかってきたり…
前半はこの穏やかな日々がずっと続きますようにと祈りたくなり、後半はその盛り上がりにわっと気持ちが昂り、どんどんページを捲りたくなります。ハラハラドキドキの、面白い作品です。
紅茶の感想
とにかく面白い!小説って楽しいなぁと改めて感じたというか、最高でした。
色んな人に「この本面白いよ、ぜひ読んで!!!」とおすすめして回りたくなっています。笑
個人的にこの一文に痺れました。どんなシーンなのかは、ぜひ確認してみてください〜!
”いまからこのホールの中は、あの深海の景色に変わる。”(P.131より)
綺麗な作品でした
スパイなのですが、潜入先が「音楽教室」というのも面白い設定ですよね。
人を恐れながら、苦しそうに生きる橘に自己投影をしながら読み進めました。
潜入先でチェロを教えてくれる浅葉という先生に出会い、変わっていく様子に救われます。
バレるんじゃないかとヒヤヒヤしたり、教師や周りの生徒たちと打ち解け、その人たちを好きになっていく橘を見て「でもスパイだし、期限付きの潜入なんだ…」と思うと悲しくなり、情緒かき乱されました。ですが、全て読み終わり、改めて綺麗な作品だなと思いました。
音楽の力ってすごい
チェロの音色は「人の声」に近いらしいですね。
私はチェロにあまり詳しくないので、読了して思わず何曲か聴いてみました。穏やかで落ち着く音色の、素敵な楽器でした。
今は機械越しに聴いていますが、やはり生で演奏を聴くともっと体にも心にも響いて感動するんだろうなぁと妄想してしまいました。
それにしても、どうして人はこんなに音楽に心を動かされるのでしょうね。(もちろん私も音楽が好きです)
人の心を掴んで離さずに、前に突き動かす力がある…音楽ってすごくて、不思議です。
皆様もぜひ『ラブカは静かに弓を持つ』をお楽しみください。
最後に私の心に残った言葉を引用しておしまいにします。
ありがとうございました。
それでは〜(・v・)ノシ
みずからが作り上げた巨大な防壁の向こう側に、いい加減、一歩を踏み出すべきだった。
安壇美緒『ラブカは静かに弓を持つ』(集英社、2022年)P.285より